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カルロス・トシキ→岡村靖幸→尾崎豊④


私は

尾崎豊さんの歌と

私だけの

小さな世界の中で

自己完結しながら生きていくという術と

その心地良さを覚え

次第に落ち着いていきました。


母親が私に投げつけてくる

言葉、感情、どこまでも満たされない人間独特の

嫉妬や憎悪、罵る言葉、ヒステリー

以前の私はそれらを前に立ちすくみ

バシバシと体にぶち当たる痛みに

耐えきれず踞っていました。


けれど次第に私は

それらを受け止め

受け止め切れなかったものは

後で丁寧に拾い集め

じっと見つめるようになりました。


鬱屈とした気持ちは

日記に書き、 読み返し

まるで第三者のような目線で

自分の周りの出来事を

見つめていました。

日記は尾崎豊さんへの手紙のように

書いたりもしていました。


今思えば私のそれらの行為は、

閉ざされた

自己完結的な 小さな世界の中での

私の 成長、進歩、後退、変化

どれなのかわからないけれど


私が自らの意思で

自分の中から尾崎豊さんの存在を消し去る

前触れだったのです。


尾崎豊さんはその頃

ニューヨークにいたと思います。

私は m3(mind map members)という

尾崎豊さんのファンクラブから届く

封書を心待ちにしていました。

尾崎豊さんがニューヨークから

ファンへメッセージをくれたのを覚えています。


中学三年生になった私は

進路を考えなければなりませんでした。

母親のもとから逃げ出したいばかりの頃は

高校進学をせず家を出るか

遠くの高校へ進学して寮に入るか

と考えたこともありました。


けれど自宅から通えるところに

尾崎豊さんの初期のマネージャーを勤めた方の

出身高校があり

そこを志望校に決めました。

音楽活動をしている人がわりと多くて

自由な校風といわれる高校でした。


その初期マネージャーの方は

尾崎豊さんの親友でもあり

尾崎豊さんを支えた一人であり

私の憧れでもありました。


中学校では私は

仲良しの女友達がいて

四人グループで

みんなそれぞれ好きなアーティストがいて

その話で盛り上がるのが

とても楽しかったのを覚えています。


尾崎豊さんがニューヨークから帰国して


その仲良し四人で出掛けたのが

HIROSHIMA1987-1997

ピースコンサートでした。


コンサートに行くことを許してくれない母親を

説得するのに苦労した記憶があります。


けれど

不思議なことですが

母は というか

母も

尾崎豊さんの歌を

好きでした。


私がベッドホンで聴いていると

自分にも聴かせてほしいと

言うのです。


私の父が尾崎豊さんの歌を

「あんなものは歌じゃない。」

と言った時、真っ先に反論したのは

母でした。


コンサートの収益は、

原爆被災者への寄付金という

チャリティーコンサートだったこともあり

母は行くことを承諾しました。

私の父親と母親は

被爆者手帳を持つ人でした。



初めて出かけたコンサート。

初めて見る尾崎豊さん。

二階席で距離は遠かったけれど

眩し過ぎるくらいのライトに照らされて

ステージに浮かび上がる尾崎豊さんを見ました。

雑誌でなど、写真で見るよりも

子供っぽい人で驚きました。

陽気で明るい人

でもやっぱり悲しそうな人。

そう思いました。



岡村靖幸さんのステージに

尾崎豊さんが飛び込んできて

後に夢の共演と言われる

あのステージ。


二人がまるで犬のようにじゃれ合っていて

微笑ましいというか

ふたりは仲がいいんだな

と思いました。


岡村靖幸さんはデビューしてから

そんなに経ってなくて

まだ知名度は低かったと思います。


尾崎豊さんがそんな岡村靖幸さんの

ステージに飛び込んできたことにより

岡村靖幸さんは

岡村靖幸を知らない人からの

注目や関心を一気に集め

知名度を 想定していた以上に

上げたのではないかと思います。


尾崎豊さんはやっぱり

心優しき優等生だな と

思った記憶があります。


その後の尾崎豊さんは

アルバムの発売が何度も延期され

私はレコード店でその知らせを知っては

不安な気持ちになっていきました。

ツアーが中止になったりもしました。



そして、尾崎豊さんの逮捕のニュース。



私は驚き、動揺しながらも

「ちゃんと学校へ行かなくては。」

と思い、なんとか中学校までたどり着いたものの

教室に一歩入った途端に

クラスの子達から

尾崎豊さんの逮捕の話を振られ

その場に泣き崩れたのを覚えています。


人目もはばからず、わぁわぁ泣いて

クラスの男子から

「訳わかんねぇ、この女。」

みたいなことを言われました。


ー 私だって訳わかんない ー


突然襲ってきた出来事に


私は訳もわからず


ただただ 泣いていました。



続く